日系企業の韓国法人が抱える共通の組織問題
ソウルで日系韓国法人の駐在社長の方々にお会いすると、業種が違っても悩みは驚くほど似ています。「社員の平均年齢が上がり続けるのに、新規採用ができない」「真面目だが、新しいことに挑戦する人がいない」「評価はしているが、誰も結果に納得していない気がする」。製造、素材、保険、商社——業種を問わず同じ話が繰り返されます。
業種が違うのに症状が同じなら、原因は個々の会社ではなく構造にあると見るべきです。本稿では、在韓日系企業の人事・組織コンサルティングを10年以上行う中で確認してきたその構造を整理します。
出発点:「連結型ビジネスモデル」という構造的条件
多くの日系韓国法人のビジネスは本質的に「連結」です。日本本社の製品・技術を韓国の顧客に供給し、市場の要求を本社に伝える。安定的ですが、法人が自ら生み出す付加価値の範囲が狭い。事業範囲が固定されればヘッドカウントも固定されます。本社から見れば「今の人数でうまく回っている組織」に増員を承認する理由がないからです。ここから組織問題のドミノが始まります。
このサイクルの怖さは、構成員一人ひとりには何の落ち度もないことです。皆真面目に働いています。ただ組織に新しい職務が生まれないので挑戦の機会がなく、挑戦がないのでスキルが伸びず、「言われたことだけやる組織」という評価が固まっていく。学習性無力感が組織単位で起きるのです。
人事制度の弊害:本社制度と韓国の現実の乖離
第一に、評価が形式化します。本社様式を翻訳して使う評価制度は韓国法人の実際の職務と合わないことが多く、評価者は「無難な点数」をつけ、数年で全員が同じ等級に集まります。評価が識別しなければ、報酬も動機づけも機能しません。第二に、昇進が詰まります。ポストが増えず、上の年次が厚いため、優秀な若手ほど先に去ります。第三に、文化が衝突します。稟議に代表される合意文化は韓国市場のスピード感とぶつかり、「決められない会社」という認識をつくります。実務者は韓国人上司と日本人駐在員に二重報告し、結論は本社回答待ち——意思決定リードタイムそのものが競争力を削ります。
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真っ先に意欲を失うのは、最も頑張った人です。
二つの誤った処方
ひとつは本社制度の強化移植——乖離が原因なのに乖離をさらに広げます。もうひとつは韓国式の急進改革——本社の承認文化と既存構成員の心理的契約を無視すれば、組織対立だけを残して座礁します。どちらも失敗する理由は同じです。片方の論理だけで設計したからです。
解決の順序:構造診断 → 双方が納得する設計 → 運用伴走
まず上記の悪循環のうちどの輪が御社のボトルネックかを診断します。次に本社が承認できる形式と、韓国の構成員が納得する内容を同時に満たす制度を設計します。日本語の稟議文書と韓国語の説明資料を併せてつくるのは、だから選択ではなく必須です。最後に設計で終えず、運用を一緒に回します。最初の評価サイクル、最初のフィードバック面談、最初の本社報告まで伴走して初めて、制度は現場に定着します。根本原因が「連結型事業モデル」にあるなら、新規事業領域の発掘やオープンイノベーションといった事業次元の処方も併せて必要です。
MOG代表は横浜国立大学で学び、東京のコンサルティングファームで訓練を受けた後、ソウルジャパンクラブ(SJC)経営委員会の唯一の韓国人メンバーとして活動しています。日本人経営者の言語と韓国人構成員の言語——双方の言葉と文脈を通訳できること。それがこの問題に取り組む私たちの出発点です。